京で見かけるひな人形 徒然

今週のお題「雛祭り」

 

f:id:kyotodaisyuky:20210304005313j:plain

子供の頃、雛人形と言えば緋色の壇に飾られたものというイメージだった

3人官女に、五人囃子、牛車や豪華絢爛な調度品など

アイテム数の多さとその精緻さに、子供心に感心したのを覚えている

 

丁度ひな人形の記事を書きたいなと思っていたので

日付を超えてしまったが徒然と書き残したい

 

季節折々の行事を大事にする京都

何かの折に街へ赴けば、

和菓子屋では桃の節句にちなんだお菓子が売られていて

桃の花が活けられているもよく見かけた

 

そして、やはり一番目を引かれ思わず微笑んでしまうのが

お内裏様とお雛様のペアが飾られている様子だ

この二人の夫婦セットを「親玉」というと

最近私は初めて知った

 

そして、親玉の左右の配置について

 

「お雛様が向かって右」

 

と、私は今まで自分が見た雛人形の記憶の蓄積から

ずっと思っていた

しかし、京都で見る雛人形は逆の配置

つまり向かって右がお内裏様(男雛)、左がお雛様(女雛)

であることが多いことに気づいた

 

あれ、間違えて記憶してた?

もしや自分の地元だけ違う?と疑問に思い

先日職場の人々に、親玉の左右について尋ねてみた

 

すると、関西以外の出身者は私と同じ

京都、大阪の人は向かって右がお内裏様、つまり逆、という結果だった

 

Wikipedia等でサクッと調べてみたところ、このようなことが分かった

 

古来、日本では左側が上位とされていた

これは南を向いた時に日が昇ってくる東側が上位であるというのが

日本古来の礼法、風習であったためである

そのため、雛人形ももともとそちらに男雛を配置していたそうな

雛人形視点で左。つまり鑑賞者から見て右)

 

近代になってから、右を上位とする西洋の文化を受け

皇室でも西洋に倣った右上位のスタイルが取り入れられるようになり

世間でも一般的になったそうだ

そして、雛人形も右側(向かって左)が男雛になっていったのだという

 

そうして現代の雛人形は、

関東を中心に右上位(向かって左が男雛)が標準となり、

京都を中心とした関西地方は

古来よりの左上位の配置(向かって右が男雛)が

今も受け継がれているのだそうだ

 

なるほどなあ、御所のある京都ならではかも、と納得した

 

それともう一つ、御所&雛祭りといえば

京都に越して間もない頃、平安神宮で見たあの樹木を思い出す

 

「右近の橘」

 

右近の橘(平安神宮境内) | 施設・スポット | 岡崎コンシェルジュ

 

雛飾りの5段目あたりの両脇によく飾られる「橘」と「桜」

これらは「右近の橘」と「左近の桜」と呼ばれる

この呼び名は、実際に京都御所の紫宸殿の前に植えられた樹々のそれである

 

平安神宮の本殿の正面にも、御所を模して

向かって左に「右近の橘」、右に「左近の桜」が植えられているのだ

 

なぜ記憶に残っているかというと

私が平安神宮を訪問したとき、

その「右近の橘」が実際に実をつけていたからだ

 

橘は常緑樹で、松と同様、永遠・不老長寿のシンボルである

また、日本古来の柑橘類である橘は、芳しい香りを発することから

 

・時じくの香の木の実(ときじくのかくのこのみ)…「古事記

・非時香菓(ときじくのかくのみ)…「日本書紀

 

=いつまでも香りを放つ実

 

=不老不死の実 

 

として古くから描かれている

 

常世の果実に見えることが出来るとは

なんとありがたいことか

と、拝む気持ちでしげしげ眺めたものだった

次は満開の左近の桜をみてみたいものだ

 

正直、子供の頃は

「お花をあげましょ桃の花」って童謡でも歌ってるし、

「桃」の節句だし、飾るなら桜じゃなくて桃では?

と思っていた

 

しかし、花屋で売られている桃の枝を見ているうちに、

せっかく見頃の季節なのだから、本物を飾れば良いのか、と

大人になった今更になって気付いたのだった

 

それとそうだ、

もう一つ気になっていることがあった

街で見かけるものに、「立ち雛」が多いように感じたのだ

 

 

 

これも何か理由がないか調べてみた

 

そこで分かったのが、雛人形のルーツはそもそも立ち雛であったということだ

雛人形の原型といわれる「流し雛」は、

立った人間の形の紙でできた、厄払いの神事に使う形代であり

源氏物語の中でも描写されていることから、平安時代頃には存在したとされる

座り雛は江戸時代頃から流行したそう

 

やはり伝統的なスタイルゆえに、京都には立ち雛が多いのだろうか

それとも

ウナギの寝床とも表現される狭い間口ゆえに

比較的省スペースな立ち雛が重宝されているのだろうか

ほんとのところは未だ分からない

 

 

ちなみに、京都でつくられるおひなさま「京雛」は

熟練の職人の手作りで、西陣織の裂で衣装がつくられているそうだ

顔立ちも関東製のものと少し異なり、

細めの目に、よりおっとり柔らかい表情が特徴らしい

 

これまで見かけたものは陶器製の置物タイプのものが多かったので、

もし今後「京雛」に出会うことができたら、

その西陣織の衣装と、表情をじっくり鑑賞したいと思う

 

 

 

 

きょうはくの記事が面白かったので貼っておきます

おひなさまの話/京都国立博物館

https://www.kyohaku.go.jp/jp/dictio/senshoku/hina.html

 

京雛を作る京人形の老舗

www.ando-doll.com

 

 

 

そういえばこいのぼりの歌で

「橘かおる朝風に」て詞があったなぁ

桃の節句でも端午の節句でも、橘大活躍ですね