きょうの桜は花盛り

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3月16日、京都で開花速報が発表された

 

観測史上最速という予想外の速さで、桜前線は京都を駆け抜けた

3月後半は見る見る花房が膨らみ、笑み、春の陽気の訪れを日々感じさせてくれる

碁盤の目の街を自転車で縦横無尽に移動している私としては、今が一番心躍る時期だ

 

時折ぐっと冷え込む「花冷え」の日や、春の嵐かと言った荒天日も経たが

今、京都の桜はどこも概ね満開。見頃を迎えている

 

概ね、と書いたのは、桜の品種によっては早咲、遅咲きもあるためだ

比較的早咲きの寒緋桜や河津桜は既に盛りを過ぎている

遅咲きの八重桜、しだれ桜などはこれからだろう

 

鴨川の河川敷や蹴上のインクロード、街路沿いを薄紅色で染め上げている桜

日本国内の各地で見かけ、そもそも「桜前線」のメインとなるあのおなじみの桜が、

ソメイヨシノという品種であることは、ご存知の方も多いだろう

そしてそのソメイヨシノが、栽培品種のクローンであるということも

 

 

 

私はそのことを、学生時代に読んだこの新書で知った

ソメイヨシノは、品種改良によって生まれたもので

 桜=ソメイヨシノというイメージは明治以降のものであり、

古代から日本に生息し、愛されてきた「桜」は必ずしも、花だけが一斉に咲いて、散る、薄紅色の花のみではなかった

 

 

一口に桜といっても、その品種は野生種から改良された園芸種まで

多種多様に存在する(とりわけ日本で改良された園芸品種は圧倒的に多いらしい)

 

基本的に桜という品種は必ずしも花だけが先に咲くのではない

「葉桜」というと花の終わりをイメージするが、

葉とともに花をつける品種もある。野生種のヤマザクラオオシマザクラなどがそうだ

色も薄紅色だけでなく、薄墨のような白から、緑味、黄味の強いもの、オペラピンク、紅色に近いものまで幅広く存在する

 

ソメイヨシノという桜が明治以降に日本にもたらした観念についてなどは、今回は触れない

未読でご興味のある方はぜひこの本を手にとってみてほしい

 

この本を読んでから私は、

ソメイヨシノとは、桜へのイメージ、幻想、憧れのようなものを

抽出したような存在なのだな、と納得した

 だから、毎年桜に出会うたびに、

懐かしいのに、現実離れした景色を眺めているように感じるのかもしれない、と

 

 

さて、話を少し戻すと、

ソメイヨシノは江戸後期に生まれ、明治以降に普及した園芸品種なので

 京都で「桜の名所」と名の知れた場所には、ソメイヨシノ以外の桜も多い

 

京都の桜の名所と聞かれて思いつく場所は星の数ほどあるが、

私がパッと思いつく有名どころといえば

「御室桜」「円山公園の桜」「平野神社」あたりだろうか

 

「御室桜」は右京区にある真言宗御室派総本山、

御室 仁和寺でみられる桜の林一帯を指す

御室有明御衣黄鬱金などといった様々なサトザクラの品種が楽しめる

 

その中でも特に御室有明という品種=御室桜という認識が強いそうだ

御室桜は背が低く、八重と一重の花が入り混じっているのが特徴だ

こちらは遅咲きの桜で、見頃はまだ先のようだ

 

ninnaji.jp

 

円山公園は観光スポットである祇園、八坂神社のすぐ近くにある

ここは非常に人気の花見スポットで、毎年たくさんの観光客・花見客が訪れる

(そのため個人的には正直、人が多すぎて用事がないとなかなか寄る気になれない場所でもある。今年はコロナで流石に人出は少ないのだろうか・・・)

 

風光明媚な庭園に、ソメイヨシノヤマザクラなども多数植えられており、目を楽しませてくれる

主役は何と言っても円山公園のシンボル、

祇園しだれ桜」と呼ばれている枝垂れ桜である

夜桜が特に有名らしいが、今年のライトアップは中止、露店やゴザの貸し出しもなくなったそうだ

kyoto-maruyama-park.jp

 

私が個人的に心に残っている桜の名所は、平野神社だろうか

北野天満宮の近くにある神社で、桜の名所として非常に有名な神社だ

境内には様々な品種の桜が植えられており、

こちらも花見の名所として大変人気である

 

この神社発祥という「魁(さきがけ)桜」は早咲きの桜で、

これが咲くと京都に春、桜の季節がやってきたと言われたそうだ

コロナ前には桜茶屋といって、大々的に出店・飲食スペースができていたが、

当たり前だが今年も中止である。無念

 

www.hiranojinja.com

 

授与所で桜湯をいただき、緋色の毛氈を貼った長椅子に腰掛け、ぼうっと桜を眺めた

お土産にと桜湯用の桜の塩漬けを買って帰ったことをよく覚えている

あんなのどかな日が、早く戻ればいいなと心から思う

 

 

春雨の 降るは涙か 桜花 散るを惜しまぬ 人しなければ  大伴黒主

 

 

日曜日の予報は、雨

今年の京都の桜も、切ないほど美しいです

 

 

 

・・・締めようかと思ったのですが、せっかくなので

 

上の和歌を知ったのはこの漫画

 

 

平安時代のおてんばお姫様の冒険譚のようなストーリー。原作は小説

子供の頃に読んで今も忘れられない、とても素敵な作品だ

京都に暮らし始めて、この漫画で知った地名や単語に出会うことが頻繁にあって

その度にちょっと嬉しくなる

 

また、この作品の影響で私は、「吉野の桜」へ強い憧れを抱くようにもなった

主人公 瑠璃が帰りたい思い出の場所として、

ちょくちょく登場する「吉野」の桜

平安時代の人々にとって桜といえば、吉野の桜であったと言う

あと個人的に西行法師の歌が好きなので、彼が愛した吉野の桜を一度見てみたい

吉野は奈良県で、京都の話ではないが、

せっかく同じ近畿に住んでいるのでいつか吉野山へも行ってみたいなと思っている