あっという間に秋

いつの間にか水無月を食べ損ねていた。

 

休憩時間に頂いたゼリー羹に緋色の金魚が泳ぐのを見て、

今年も祭はなかったなあとしみじみしてしまった

この夏は、慌ただしい日々と鍔迫り合いをしているうちに

真夏のピークはあっという間に過ぎ去っており、

8月の末にやっと、この夏最初で最後のかき氷を食べ納めた次第である

悔しかったので近所の和菓子屋で一番高いトッピング全乗せ宇治氷を注文した

今年こそマールブランシェの水モンブランを食べたいなという淡い思いは

案の定今年も叶えられなかった

 

食べ物のことばかりで申し訳ない

しかし私にとって、

季節を追いかけ楽しむことは、食べることと同義と言っても過言ではない

しかもこのコロナ禍の折、行楽はおいそれと行けない故に、楽しみはより食に振られる

 

これから秋本番。

秋は無論、食欲の秋。

中秋の名月には、月見団子を滑り込みで頬張ることができた

関西の月見団子の形は里芋の形を模しているというが、

団子があんこの帽子を被ったような見た目で可愛らしい

 

最近スーパーの野菜売り場で栗を見かける

殻付きの、生の栗だ。久々にその姿を見てほう、と見入ってしまった

故郷は田舎だったので、幼い頃の記憶に、

栗林を持つ近所の方に栗をお裾分けしてもらうことが幾度かあった

母がそれを鍋に入れてしばらく水に漬けてから茹で、

茹で上がったら各々割って食べたものだ

殻の真ん中にグッと爪を割り込ませ、半分に割ってスプーンで掬う

淡い黄色い実はしっとりとして、ほんのり甘い。

硬い殻は時折うまく割れないし、

中身を一気に取ろうとすると渋皮がついてくるし、

小さな栗は取るのが大変だった。

しかし、今思い返すとあれは楽しい時間だった

 

秋の味覚の代表格として「芋・栗・南京」という言葉が挙げられるが、

個人的にはダントツで好きなのは、栗だ

秋のお菓子の中でもダントツの存在感だと思っている。あくまで個人的にだが

和菓子なら栗蒸し羊羹、栗かのこ、栗饅頭、甘納豆、栗きんとん。

洋菓子ならモンブラングラッセ、チョコレートや焼き菓子に入っているのも最高だ。

 

去年は若菜屋さんの栗阿彌(りつあみ)を初めていただいた


 

 こういう、栗が丸ごとホールでいただけるものは至上の贅沢という感じがする

確か若菜屋さんは他にも栗のお菓子がいろいろあった気がする

 

さあ、錦秋の京都で、私は秋の味覚をいくつ拾うことができるか。

目下の課題である