あっという間に秋

いつの間にか水無月を食べ損ねていた。

 

休憩時間に頂いたゼリー羹に緋色の金魚が泳ぐのを見て、

今年も祭はなかったなあとしみじみしてしまった

この夏は、慌ただしい日々と鍔迫り合いをしているうちに

真夏のピークはあっという間に過ぎ去っており、

8月の末にやっと、この夏最初で最後のかき氷を食べ納めた次第である

悔しかったので近所の和菓子屋で一番高いトッピング全乗せ宇治氷を注文した

今年こそマールブランシェの水モンブランを食べたいなという淡い思いは

案の定今年も叶えられなかった

 

食べ物のことばかりで申し訳ない

しかし私にとって、

季節を追いかけ楽しむことは、食べることと同義と言っても過言ではない

しかもこのコロナ禍の折、行楽はおいそれと行けない故に、楽しみはより食に振られる

 

これから秋本番。

秋は無論、食欲の秋。

中秋の名月には、月見団子を滑り込みで頬張ることができた

関西の月見団子の形は里芋の形を模しているというが、

団子があんこの帽子を被ったような見た目で可愛らしい

 

最近スーパーの野菜売り場で栗を見かける

殻付きの、生の栗だ。久々にその姿を見てほう、と見入ってしまった

故郷は田舎だったので、幼い頃の記憶に、

栗林を持つ近所の方に栗をお裾分けしてもらうことが幾度かあった

母がそれを鍋に入れてしばらく水に漬けてから茹で、

茹で上がったら各々割って食べたものだ

殻の真ん中にグッと爪を割り込ませ、半分に割ってスプーンで掬う

淡い黄色い実はしっとりとして、ほんのり甘い。

硬い殻は時折うまく割れないし、

中身を一気に取ろうとすると渋皮がついてくるし、

小さな栗は取るのが大変だった。

しかし、今思い返すとあれは楽しい時間だった

 

秋の味覚の代表格として「芋・栗・南京」という言葉が挙げられるが、

個人的にはダントツで好きなのは、栗だ

秋のお菓子の中でもダントツの存在感だと思っている。あくまで個人的にだが

和菓子なら栗蒸し羊羹、栗かのこ、栗饅頭、甘納豆、栗きんとん。

洋菓子ならモンブラングラッセ、チョコレートや焼き菓子に入っているのも最高だ。

 

去年は若菜屋さんの栗阿彌(りつあみ)を初めていただいた


 

 こういう、栗が丸ごとホールでいただけるものは至上の贅沢という感じがする

確か若菜屋さんは他にも栗のお菓子がいろいろあった気がする

 

さあ、錦秋の京都で、私は秋の味覚をいくつ拾うことができるか。

目下の課題である

心を潤す記憶

今週のお題「雨の日の過ごし方」

 

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今日の京都は束の間の晴れ模様。

 

梅雨入り以来、雨がちな日が続いたので

今日は久々に家全体の換気をしている

洗濯をして、軽く掃除をして、風の通る室内で伸び伸びするのは心地良い

貴重な晴れの日を享受しながら、梅雨の楽しみといえば何があったかなと

改めて考えてみることにした

 

さて、暦の上ではすっかり夏であるこれからの時期、

京都暮らしで楽しみなことはなんだろう

 

私がこの時期楽しみなのは、

紫陽花、クチナシの香り、青楓、苔むした庭、夏椿。

夏椿は京都に住み始めてから出来た友人に教えてもらった

夏椿とは6月頃に咲く白い椿の花だ

平家物語でも諸行無常のシンボルとして描写される「沙羅双樹」になぞらえて、

「沙羅の木」とも呼ばれ、寺院でよく植えられているそうだ

 

夏椿は、朝に花開いて夕方には落ちてしまう一日花だ。

その美しさと儚さに「無常」を想起させられる

 

妙心寺塔頭東林院は夏椿で有名な寺院で、友人に誘われて訪れた

途中道に迷って、雨は幸い降っていない日だったが

湿気塗れた空気の中、汗だくになりながら探し歩いたのを覚えている

妙心寺についてからも敷地が広く早足で向かったものの、

東林院に辿り着いたのは入場時間ギリギリであった

 

縁側で、説法を聞きながら眺めた庭の夏椿

木についた白い花たちと、苔の上に落ちた白い花たち

火照りが収まり汗がひいてくと同時に、心に染みるものがあった

この時期が近付くと毎年、あの時のしっとりした空気を時折思い出す

 

東林院は通常非公開で、夏椿の時期は二週間ほど公開されている。

コロナが落ち着いたらまた訪れたい場所だ。

 

こうして思い起こすと、この時期は五感が刺激された記憶が多いように感じる

そんな描写があった作品があった

 

 

 「日々是好日」

樹木希林さんと黒木華さんが出演する、茶道の物語

雨の音を聴く描写がとても美しかった。

 

そういえば、夏の抹茶碗が私は好きだ

茶道には全然詳しくないのだが、

夏の時期の抹茶碗は、浅く口が広くなる

そうすることでお茶が冷めるのが早くなるのだという

(逆に冬の茶碗は背が高く、筒茶碗と呼ばれるものもある)

絵柄もデザインも夏めいて、爽やかな物が多くて楽しい

茶道は季節感を何より大事にするので、

お茶道具屋さんやお菓子屋さんのディスプレイはこの時期とても涼やかで楽しみだ

 

昔、お茶をしている方にお会いしたときに

「夏は水を注ぐときに水音をしっかり立てることで、

 お客さんに涼しさを感じてもらえる」

と教えてもらったことがある。

 

こういう風に、

五感を刺激されながら、

工夫して蒸し暑さを凌ぎ、

工夫することを楽しむのが、梅雨の醍醐味なのかも知れない

 

 

でもやっぱり、一番楽しみなのはお菓子。

最終的には花より団子である。

 

先日も触れたが、水無月は外せない。

もちもちしたういろうのようなものに小豆が乗った三角形の和菓子だ

氷室の氷を模した、暑気払いと無病息災を祈ったお菓子で

半年間の穢れを落とす、夏越の祓(6月30日)に食べるのが習いだ

京都の和菓子屋なら大体どこでも作っていて、5~7月くらいに販売している

私の近所の和菓子屋でも、もう店頭に並んでいた

食べ比べなどしてみたいが、結構腹持ちが良いのと

一つのお店だけでも、抹茶、黒糖など2〜3種バリエーションがあることが多いので

実現するのはなかなか大変そうだ

 

個人的にはわらび餅も外せない

蕨は春のものなので、わらび餅自体は春の季語らしい

旬とされるのも4〜5月なので旬は過ぎてしまっているのが、

プルプルした見た目や食感が涼しげなので

私的には水羊羹の一歩手前にいる夏のお菓子という感じがしている。

それゆえ、私はこの時期よく食べたくなる。

 

京都人に勧められて個人的にも美味しかったわらび餅

ecstore.bunnosuke.jp

 

「文の助茶屋」

京都に住む前に観光でお店にも行ったことがある。

清水寺のほど近く、観光地ど真ん中にある甘味屋さんだ

遊び心あふれる店内で、甘酒とわらび餅が絶品だった

ネット通販もやっているようなのでわらび餅好きの方は是非。

 

あと、一度は食べてみたいと思いつつ、

いつも何となく手を出せないわらび餅がこれ

 

 笹屋昌園の、「本わらび餅極み」

見た目から圧倒的に訴求してくる「極み」感

伊勢丹で出会うたびに気になっていたが、いつも躊躇してしまっていた

今年こそ挑戦したい

 

 

 

今年の梅雨は

雨音を聴きながらお家で和菓子アフタヌーンティー

というのが間違いなさそうだ

 

 

今から雨が降るのが楽しみである

 

梅雨空と、日本史への苦手意識

今週のお題「やる気が出ない」

 

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今日は朝からうっすら雨模様。

ついに近畿地方にも梅雨の季節が訪れた。

 

ただでさえ湿気の多い京都。

これからおそらく湿度80〜90%の日が多くなってくる

肌にまとわりつくこの温い湿気に、茹だるような暑さとともに、

体力と気力を削がれてしまう

 

外の空気はもわりと水気を帯び、外を歩けばなんとなく肌と服が湿気るのがわかる

家の一階部分は涼しいがやはり湿気がひどく、玄関の土壁は雨の日には結露すらする

 

水無月、割氷、若鮎、いっそのことかき氷みたいな、

避暑を求める心をほんのり潤す初夏のお菓子を僅かな楽しみにして

私は今年もこの、京都全体を覆い尽くす湿邪と戦っていくであろう

 

 

正直、こんな時期に勉強なんて、と思っている

 

実は、今年の抱負として書くのを躊躇った目標がある

それは、「京都検定」の受験だ

 

正式には、「京都・観光文化検定」という名称で

京都商工会議所が主催するご当地検定である

 

せっかく京都にいるのだから、と

受けてみたいなと仄かな思いをずっと抱いていた

最近はステイホームの風潮もあるし、家で勉強をするのも悪くはないな、と

 

しかし、この湿気。私の苦手な湿気。

おそらくテキストやノートも湿気る、梅雨時。

私のやる気は既に激しく削がれている

 

やる気を削ぐもう一つの理由は自らの内にある

 

私は、日本史が苦手だ。

 

高校生の時分は世界史を選択した(得意ではなかったがカタカナ単語が面白くて好きだった)

今まで日本史から逃げ回って生きてきたので、

有名な歴史の節目の戦争とか、将軍とか、何もかもうろ覚えで

おそらくそこらの小学生より日本の歴史を分かっていない自信がある

 

文学作品や芸術、祭り、風習など文化的な物事でいいな、と思うものはあっても

日本の歴史で何が好きか、と言われると特に思いつかなくて困ってしまう

 

新撰組とか、戦国時代とか、あまりピンとこないし

時代物の創作物、大河ドラマ等にもあまり興味がない

 

 

 何と言うか、日本史にロマンを感じない残念な人間なのだ

 

京都は歴史の街だ

日本の歴史の中でも、京の都は常に中心にあると言っても過言ではない大舞台

京都の観光文化を学ぶなら、日本史の勉強は避けられないだろう

 

しかも、このただでさえやる気の起きない時期に試験勉強をするなんて

自分でも勝ち目のある戦いをするべきだと宥めたくなる

 

・・・一番初級の3級すら全く自信がない

 

京都検定の申し込みは今月中で、試験は7月11日。

公式テキストブックから90%以上出題されるそうだ

 

 

買うかどうかすら未だ迷っている

 

こんな私でも頑張れるだろうか・・・

 

 

晴れぬ空を見上げ曇る気持ちを、どうにか前に進めたい

 

 

まずは水無月を買いに行こうと思う

 

京都暮らしを確実に快適にしてくれたもの

#新生活が捗る逸品

 

このお題を見て真っ先に私が思い至ったのは、

「断熱アイテム」だ。

 

私は現在、古い木造の長屋をリフォームした家に住んでいる

窓はサッシ戸、床はフローリングでぱっと見現代的な洋風の内装だが

この家に越して初めての冬、思わぬ京都の洗礼を受けた

 

それこそが、盆地の「底冷え」だ

 

正直、今も京都で暮らしていて一番辛いのが、「冷え」である

底冷えとは、「体の芯まで冷えるような寒さ」のことで、

京都の盆地特有の寒さとして良く表現される

京都に住んでみて私は初めてその底冷えを体感し、しみじみ思ったのが

「寒さには種類がある」ということ

 

私が今まで認識していた冬の寒さは、太陽の力が弱まって

「寒い空気の塊」、つまり寒気に包まれることだった

冷えた空っ風に身を縮こまらせて「ああ寒い」と呟くのが常だった

しかし、底冷えは一味違う

京都の底冷えは、地面から湿気とともに足元を掴み、じっくり染み渡り、

身体を骨の髄まで冷やしてしまう

比喩では無く本当にそう感じるのだ

 

元々が木造の我が家の一階は、冷気が床と窓から浸透してくる

カーペットを敷いた程度では回避できない。座った尻から冷やされるのだ!

冬場に一階部分で過ごすと体がみるみる冷え、いくら着込んでも太刀打ちできない

だるまのように着膨れてもなお手足が冷たくなるので、正直絶望した

そこで助けてくれたのが、冒頭に書いた「断熱アイテム」だ

 

 

こちらが実際に取り入れた床用の断熱シート

これをまず床に敷いてからカーペットやラグを敷いたところ、

床からの冷気が明らかに遮断された

アルミ素材のシートは災害時などにも使われるが、本当に効果があるのだなと感心した

少しクッション性もあるので快適だ 

暖かくなったらラグとともに撤去している

(夏場の一階は床からの冷気が上がって、むしろ快適なのだ)

 

 

こっちは、窓に貼るタイプの断熱シート

緩衝材(プチプチ)みたいな素材で、窓を水で濡らして貼り付けるとくっつく

庭に出るサッシ戸のガラス全面に貼ると、効果てきめんであった

外気の冷えの遮断と、結露も防止してくれる優れものだ

 

こちらは夏の熱気も遮断してくれているように感じるので、

一階部分の窓は一年中貼りっぱなしにしている

 

私は元来寒いのが大の苦手で、京都に越して数年経った今でも冬は辛い

体が冷えると本当に身も心も滅入ってしまうので

毎年こういったアイテムを取り入れて、可能な限りの対策を取っている

 

夏は暑く冬は寒いと言われる京都。気候の変化は目まぐるしく、

未だ慣れない私は、季節の変わり目毎に心身ともに揺さぶられがちだが、

日々の移ろいを上手くこなし、さらに楽しむ知恵が

京都の暮らしにはたくさん散りばめられている

四季折々の美しい景色や、安寧を祈るための儀礼や祭りが歳時を彩り

美味しい旬のものは、体も心も潤してくれる

 

古代からの知恵と、現代の便利なアイテム

どちらも上手く暮らしに取り入れ、これからも京都暮らしを満喫したい

これから夏へ向かう季節も、楽しみでいっぱいだ

きょうの桜は花盛り

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3月16日、京都で開花速報が発表された

 

観測史上最速という予想外の速さで、桜前線は京都を駆け抜けた

3月後半は見る見る花房が膨らみ、笑み、春の陽気の訪れを日々感じさせてくれる

碁盤の目の街を自転車で縦横無尽に移動している私としては、今が一番心躍る時期だ

 

時折ぐっと冷え込む「花冷え」の日や、春の嵐かと言った荒天日も経たが

今、京都の桜はどこも概ね満開。見頃を迎えている

 

概ね、と書いたのは、桜の品種によっては早咲、遅咲きもあるためだ

比較的早咲きの寒緋桜や河津桜は既に盛りを過ぎている

遅咲きの八重桜、しだれ桜などはこれからだろう

 

鴨川の河川敷や蹴上のインクロード、街路沿いを薄紅色で染め上げている桜

日本国内の各地で見かけ、そもそも「桜前線」のメインとなるあのおなじみの桜が、

ソメイヨシノという品種であることは、ご存知の方も多いだろう

そしてそのソメイヨシノが、栽培品種のクローンであるということも

 

 

 

私はそのことを、学生時代に読んだこの新書で知った

ソメイヨシノは、品種改良によって生まれたもので

 桜=ソメイヨシノというイメージは明治以降のものであり、

古代から日本に生息し、愛されてきた「桜」は必ずしも、花だけが一斉に咲いて、散る、薄紅色の花のみではなかった

 

 

一口に桜といっても、その品種は野生種から改良された園芸種まで

多種多様に存在する(とりわけ日本で改良された園芸品種は圧倒的に多いらしい)

 

基本的に桜という品種は必ずしも花だけが先に咲くのではない

「葉桜」というと花の終わりをイメージするが、

葉とともに花をつける品種もある。野生種のヤマザクラオオシマザクラなどがそうだ

色も薄紅色だけでなく、薄墨のような白から、緑味、黄味の強いもの、オペラピンク、紅色に近いものまで幅広く存在する

 

ソメイヨシノという桜が明治以降に日本にもたらした観念についてなどは、今回は触れない

未読でご興味のある方はぜひこの本を手にとってみてほしい

 

この本を読んでから私は、

ソメイヨシノとは、桜へのイメージ、幻想、憧れのようなものを

抽出したような存在なのだな、と納得した

 だから、毎年桜に出会うたびに、

懐かしいのに、現実離れした景色を眺めているように感じるのかもしれない、と

 

 

さて、話を少し戻すと、

ソメイヨシノは江戸後期に生まれ、明治以降に普及した園芸品種なので

 京都で「桜の名所」と名の知れた場所には、ソメイヨシノ以外の桜も多い

 

京都の桜の名所と聞かれて思いつく場所は星の数ほどあるが、

私がパッと思いつく有名どころといえば

「御室桜」「円山公園の桜」「平野神社」あたりだろうか

 

「御室桜」は右京区にある真言宗御室派総本山、

御室 仁和寺でみられる桜の林一帯を指す

御室有明御衣黄鬱金などといった様々なサトザクラの品種が楽しめる

 

その中でも特に御室有明という品種=御室桜という認識が強いそうだ

御室桜は背が低く、八重と一重の花が入り混じっているのが特徴だ

こちらは遅咲きの桜で、見頃はまだ先のようだ

 

ninnaji.jp

 

円山公園は観光スポットである祇園、八坂神社のすぐ近くにある

ここは非常に人気の花見スポットで、毎年たくさんの観光客・花見客が訪れる

(そのため個人的には正直、人が多すぎて用事がないとなかなか寄る気になれない場所でもある。今年はコロナで流石に人出は少ないのだろうか・・・)

 

風光明媚な庭園に、ソメイヨシノヤマザクラなども多数植えられており、目を楽しませてくれる

主役は何と言っても円山公園のシンボル、

祇園しだれ桜」と呼ばれている枝垂れ桜である

夜桜が特に有名らしいが、今年のライトアップは中止、露店やゴザの貸し出しもなくなったそうだ

kyoto-maruyama-park.jp

 

私が個人的に心に残っている桜の名所は、平野神社だろうか

北野天満宮の近くにある神社で、桜の名所として非常に有名な神社だ

境内には様々な品種の桜が植えられており、

こちらも花見の名所として大変人気である

 

この神社発祥という「魁(さきがけ)桜」は早咲きの桜で、

これが咲くと京都に春、桜の季節がやってきたと言われたそうだ

コロナ前には桜茶屋といって、大々的に出店・飲食スペースができていたが、

当たり前だが今年も中止である。無念

 

www.hiranojinja.com

 

授与所で桜湯をいただき、緋色の毛氈を貼った長椅子に腰掛け、ぼうっと桜を眺めた

お土産にと桜湯用の桜の塩漬けを買って帰ったことをよく覚えている

あんなのどかな日が、早く戻ればいいなと心から思う

 

 

春雨の 降るは涙か 桜花 散るを惜しまぬ 人しなければ  大伴黒主

 

 

日曜日の予報は、雨

今年の京都の桜も、切ないほど美しいです

 

 

 

・・・締めようかと思ったのですが、せっかくなので

 

上の和歌を知ったのはこの漫画

 

 

平安時代のおてんばお姫様の冒険譚のようなストーリー。原作は小説

子供の頃に読んで今も忘れられない、とても素敵な作品だ

京都に暮らし始めて、この漫画で知った地名や単語に出会うことが頻繁にあって

その度にちょっと嬉しくなる

 

また、この作品の影響で私は、「吉野の桜」へ強い憧れを抱くようにもなった

主人公 瑠璃が帰りたい思い出の場所として、

ちょくちょく登場する「吉野」の桜

平安時代の人々にとって桜といえば、吉野の桜であったと言う

あと個人的に西行法師の歌が好きなので、彼が愛した吉野の桜を一度見てみたい

吉野は奈良県で、京都の話ではないが、

せっかく同じ近畿に住んでいるのでいつか吉野山へも行ってみたいなと思っている

 

京で見かけるひな人形 徒然

今週のお題「雛祭り」

 

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子供の頃、雛人形と言えば緋色の壇に飾られたものというイメージだった

3人官女に、五人囃子、牛車や豪華絢爛な調度品など

アイテム数の多さとその精緻さに、子供心に感心したのを覚えている

 

丁度ひな人形の記事を書きたいなと思っていたので

日付を超えてしまったが徒然と書き残したい

 

季節折々の行事を大事にする京都

何かの折に街へ赴けば、

和菓子屋では桃の節句にちなんだお菓子が売られていて

桃の花が活けられているもよく見かけた

 

そして、やはり一番目を引かれ思わず微笑んでしまうのが

お内裏様とお雛様のペアが飾られている様子だ

この二人の夫婦セットを「親玉」というと

最近私は初めて知った

 

そして、親玉の左右の配置について

 

「お雛様が向かって右」

 

と、私は今まで自分が見た雛人形の記憶の蓄積から

ずっと思っていた

しかし、京都で見る雛人形は逆の配置

つまり向かって右がお内裏様(男雛)、左がお雛様(女雛)

であることが多いことに気づいた

 

あれ、間違えて記憶してた?

もしや自分の地元だけ違う?と疑問に思い

先日職場の人々に、親玉の左右について尋ねてみた

 

すると、関西以外の出身者は私と同じ

京都、大阪の人は向かって右がお内裏様、つまり逆、という結果だった

 

Wikipedia等でサクッと調べてみたところ、このようなことが分かった

 

古来、日本では左側が上位とされていた

これは南を向いた時に日が昇ってくる東側が上位であるというのが

日本古来の礼法、風習であったためである

そのため、雛人形ももともとそちらに男雛を配置していたそうな

雛人形視点で左。つまり鑑賞者から見て右)

 

近代になってから、右を上位とする西洋の文化を受け

皇室でも西洋に倣った右上位のスタイルが取り入れられるようになり

世間でも一般的になったそうだ

そして、雛人形も右側(向かって左)が男雛になっていったのだという

 

そうして現代の雛人形は、

関東を中心に右上位(向かって左が男雛)が標準となり、

京都を中心とした関西地方は

古来よりの左上位の配置(向かって右が男雛)が

今も受け継がれているのだそうだ

 

なるほどなあ、御所のある京都ならではかも、と納得した

 

それともう一つ、御所&雛祭りといえば

京都に越して間もない頃、平安神宮で見たあの樹木を思い出す

 

「右近の橘」

 

右近の橘(平安神宮境内) | 施設・スポット | 岡崎コンシェルジュ

 

雛飾りの5段目あたりの両脇によく飾られる「橘」と「桜」

これらは「右近の橘」と「左近の桜」と呼ばれる

この呼び名は、実際に京都御所の紫宸殿の前に植えられた樹々のそれである

 

平安神宮の本殿の正面にも、御所を模して

向かって左に「右近の橘」、右に「左近の桜」が植えられているのだ

 

なぜ記憶に残っているかというと

私が平安神宮を訪問したとき、

その「右近の橘」が実際に実をつけていたからだ

 

橘は常緑樹で、松と同様、永遠・不老長寿のシンボルである

また、日本古来の柑橘類である橘は、芳しい香りを発することから

 

・時じくの香の木の実(ときじくのかくのこのみ)…「古事記

・非時香菓(ときじくのかくのみ)…「日本書紀

 

=いつまでも香りを放つ実

 

=不老不死の実 

 

として古くから描かれている

 

常世の果実に見えることが出来るとは

なんとありがたいことか

と、拝む気持ちでしげしげ眺めたものだった

次は満開の左近の桜をみてみたいものだ

 

正直、子供の頃は

「お花をあげましょ桃の花」って童謡でも歌ってるし、

「桃」の節句だし、飾るなら桜じゃなくて桃では?

と思っていた

 

しかし、花屋で売られている桃の枝を見ているうちに、

せっかく見頃の季節なのだから、本物を飾れば良いのか、と

大人になった今更になって気付いたのだった

 

それとそうだ、

もう一つ気になっていることがあった

街で見かけるものに、「立ち雛」が多いように感じたのだ

 

 

 

これも何か理由がないか調べてみた

 

そこで分かったのが、雛人形のルーツはそもそも立ち雛であったということだ

雛人形の原型といわれる「流し雛」は、

立った人間の形の紙でできた、厄払いの神事に使う形代であり

源氏物語の中でも描写されていることから、平安時代頃には存在したとされる

座り雛は江戸時代頃から流行したそう

 

やはり伝統的なスタイルゆえに、京都には立ち雛が多いのだろうか

それとも

ウナギの寝床とも表現される狭い間口ゆえに

比較的省スペースな立ち雛が重宝されているのだろうか

ほんとのところは未だ分からない

 

 

ちなみに、京都でつくられるおひなさま「京雛」は

熟練の職人の手作りで、西陣織の裂で衣装がつくられているそうだ

顔立ちも関東製のものと少し異なり、

細めの目に、よりおっとり柔らかい表情が特徴らしい

 

これまで見かけたものは陶器製の置物タイプのものが多かったので、

もし今後「京雛」に出会うことができたら、

その西陣織の衣装と、表情をじっくり鑑賞したいと思う

 

 

 

 

きょうはくの記事が面白かったので貼っておきます

おひなさまの話/京都国立博物館

https://www.kyohaku.go.jp/jp/dictio/senshoku/hina.html

 

京雛を作る京人形の老舗

www.ando-doll.com

 

 

 

そういえばこいのぼりの歌で

「橘かおる朝風に」て詞があったなぁ

桃の節句でも端午の節句でも、橘大活躍ですね

 

京都で徒然思ったこと

1年前に開設して放置していたこのブログ

 

ふと思い出して開いてみたら、

 

#この一年の変化

 

というハッシュタグ

自分のことかと思った

 

まず言うべきは、

 

今も京都に住んでいる

京都で日々徒然考えている

三寒四温なんて生易しいものではない

急冷急熱のこの冬の果てを云々唸りながら過ごしている

 

思えば昨年の今頃、街がガラリと様変わりし、

世間に降りかかった目に見えぬ脅威になすすべもなく

いつの間にか梅が咲いていた

 

出かけるな、集まるなと言われ

春がせっかくやってきたけれど、数ヶ月の辛抱か、と

疎水沿いの桜を、一人ひっそりと見つめたものだった

 

遠出の予定はフォーマルも私事の悉く延期し、

蒸し暑い梅雨の日もマスク姿で

不織布越しでも分かるクチナシの香りにほう、とため息をついた

 

人出が多い、少ないと日々のニュース告げられる数字を見つめ

嵐山の紅葉を見に行きたいなあ、と思いながらも、

通勤時、小高い山の錦姿に気付き、慰められる気持ちがした

 

年末年始は家で寝正月

たまの買い出しで外に出ると、雪が積もっていた

雪化粧した赤い山茶花が美しくて、写真を撮った

 

仕事以外なんだかずっと家にいたが、

京都での暮らしは今年も美しかった

 

きっとこれからも美しいのだろうと思う

 

 

お題「#この1年の変化